どうしてディズニーは20世紀フォックスを買収したの?
先日とある場でディズニー関連プレゼン大会に出席しそれなりに頑張ってプレゼンを作ったんですけど、20人ほどが聞いてくれたその場で終わりにするのももったいないかなと思い久しぶりにこのブログを活用してネットの海に放流してみることにします。という事で以下、プレゼンの原稿部分です。
こんにちは!ディズニーというのは本当に大きな世界で、自分は東京ディズニーリゾートのファンで、それ以外のディズニーの事については詳しくないなんて人もきっといるでしょう。そんな人にお届けしたい、今回のテーマは「どうしてディズニーは20世紀フォックスを買収したの?」です。
2017年12月にディズニーはアメリカの巨大映画会社である20世紀フォックスの買収を発表し、2019年3月に完了しました。もうかれこれ2年前になりますね。
まず20世紀フォックスとはどういう会社だったのかを説明し、そしてなぜ買収したか、今後どうなっていくかを説明します。なぜこれらを説明するかというと色々調べたので誰かに言いたいからで、それ以上でも以下でもありません。でも知っておくと今後のディズニーライフに役立つかもしれないし、まあたぶん役立ちませんが。
まず20世紀フォックスは、1935年に「20世紀」と「フォックス」が合併したことで設立された映画スタジオです。フォックスとは英語で狐という意味ですが、これはウィリアム・フォックスという人の名前から来ています。
様々な人気作品を製作する巨大スタジオとして長年独立した会社として運営されましたが、1984年にニューズ・コーポレーションという新聞社に買収されます。
この企業は新聞にとどまらない一大メディア企業を目指し、映画スタジオである20世紀フォックスのほかテレビ局を買収し、その事業を拡げアメリカ全土で放送されるいわば地上波のようなテレビ局にしました。そしてその名前は映画会社から取ってフォックス放送としました。
その後もテレビやインターネット関連の様々な企業を買収し傘下に収めます。
有名なものだと、例えばナショナルジオグラフィックなんかがそうです。ただ厳密に言うと元々あの有名な雑誌はナショナルジオグラフィック協会という歴史ある独立した団体によって発行されていたのですが、テレビチャンネルを立ち上げるにあたって20世紀フォックスと共同で新会社を立ち上げたので、買収して傘下にしたとは少し違うのですが。
2013年、ニューズ・コーポレーションはエンタメ部門を分社化し、新たに21世紀フォックスという会社が設立されました。ややこしい名前ですね。
そして2019年、ディズニーはこの21世紀フォックスを買収したのです。つまりディズニーは映画スタジオの20世紀フォックスだけでなく、ここには書かれていない様々な企業を含めて買収したのです。
ただし問題がありました。アメリカの法律では複数のメジャーなテレビ局を一つの会社が所有することを禁止しており、既にABCというテレビ局を所有していたディズニーはフォックス放送を買収できませんでした。そこでアメリカ国内のフォックス放送のみ違う会社がそのままの名前で運営する事になりました。
すると全く異なる会社がフォックスという同じ名前で事業を行う事になり、ブランドの管理の観点から良くありません。だってあのトランプ派であり反ワクチンだったり、色々と評判の悪いFOXニュースが何かやらかせば、全然関係のないディズニーにまで火種が飛んでくる可能性があるのですから。
そのため2020年、20世紀フォックスは20世紀スタジオと名前が変わりました。他にも様々な部門が「フォックス」という名前を外しましたが、2021年現在まだ外していない、というか外せそうにないのがFOXチャンネル。日本でもスカパーとかでドラマが見れるあれです。あれは、どうするんでしょうね。
さて、ではどうしてディズニーは20世紀フォックス改め20世紀スタジオを買収したのでしょうか。まず一番大きな理由で、大々的に報道されていたものはこれです。
見放題サービスのディズニープラスというサービスが始まりましたが、Netflixなどほかの強豪に対抗するため、そこで独占して配信できる作品を増やすという事は利用者の増加に直結します。そのためディズニーは自身が持つ作品数を増やすために買収を行いました。
けれどこれだけが理由ではありません。なぜならこれだけだと他にもある大きな映画スタジオのうちなぜ21世紀フォックスを買ったかの説明にならないからです。大きな映画スタジオといえばユニバーサル、ワーナー、ソニーなんかがありますね。もしディズニーがソニー・ピクチャーズを買収していて、何かの拍子でそこにアニプレックスが付随していたら鬼滅の刃とかFate/stay nightとかがディズニー作品になってたりしたんですかね。なってないでしょうね。(まあツイステッド・ワンダーランドとかもあるのでワンチャンあるかも…いや、ないな)
20世紀フォックスを選んだメリットは、ざっくり考えられるだけでこのようなものがあります。
・ディズニープラスで独占できる作品を増やす
・マーベルとスター・ウォーズ関連のいざこざを解決する
・Huluの株を獲得する
・まだディズニーが浸透していない地域(特にインド)に進出する
・ディズニーパークでの作品使用料を減らす(どころかユニバーサルから金をもらう)
まずマーベルとスター・ウォーズ関連のいざこざを解決するというもので、スター・ウォーズの製作スタジオであるルーカスフィルムとマーベルコミックをディズニーは買収しているのですが、話すと長くなる大人な事情により取得できていないものが複数あります。それが「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」を配給する権利と、マーベルキャラであるX-MENとファンタスティック・フォーの映画を作る権利です。それらを持っているのが20世紀フォックスであり、買収によって解決されました。
次にHuluの株を取得できる。Huluとはディズニー、フォックス、NBCユニバーサルの3社がNetflixやYouTubeなどに立ち向かうために共同で立ち上げた会社で、株をだいたい3分の1ずつ持っていました。ディズニーが21世紀フォックスを買収したことで株の半分以上を持つことになり、ディズニーのグループ会社となります。そのためディズニープラスのライバルとなりうるHuluを、むしろ自分のものに出来るのです。ちなみに日本でもよくHuluという名前を聞きますが、日本のHuluは日本テレビに買収されているので全く関係ありません。
続いてディズニーは世界的な企業ですが、どの国でも浸透している、言い換えればしっかり稼げているわけではありません。しかし21世紀フォックスは1990年代から複数の国でテレビのネットワークを築き上げており、特にインドではスターというテレビ局が高いシェアを占めています。それがディズニーのものとなったため、ディズニーが1から新たな国に進出していくよりも手っ取り早くその国の人々と繋がることができるようになりました。
そして最後のメリットは狙ってやったというよりは棚ぼた的なものですが、ディズニーパークでの作品使用料をなくせるというもの。ディズニーパークにはオリジナル、あるいはディズニー映画が原作のアトラクションしか無いと思われがちですが、実はいくつか例外があります。ディズニー作品のファンだけでなく様々な年代に楽しんでもらおうと、1987年に初めて皆さんもご存じであろうスター・ツアーズが開業して以降、複数の非ディズニー原作アトラクションが誕生しました。それらは1980年代後半から90年代前半に固まっていますが、唯一フロリダのアニマル・キングダムに最近アバターという非ディズニー作品のテーマランドが誕生しています。
しかし時が経ち、ディズニーはルーカスフィルムとマペッツ・スタジオを買収したことによりそれらはディズニー作品となりました。他のアトラクションもクローズするか、数を減らしました。そして20世紀フォックス買収でアバターがディズニー作品化したことで、再び非ディズニー作品アトラクションは消えていこうとしています。
それどころかディズニーパークのライバルであるユニバーサルスタジオは、ユニバーサル作品に限らず幅広い作品のアトラクションが存在しています。さすがにライバルであるディズニー作品を使おうとはしないですしディズニー側も使わせないでしょうが、ディズニーが買収した作品については話が別です。USJにもスパイダーマンのアトラクションがありますが、その建設後マーベルはディズニーに買収されたためユニバーサルはディズニーに作品使用料を払っています。そしてフロリダには21世紀フォックスの作品である「シンプソンズ」というアニメ作品のアトラクションがあるのですが、それがディズニー作品になったためさらに多くの作品使用料を払う羽目になりました。
さて、そしたらディズニーが21世紀フォックスを買収した今、これから何が起きていくのでしょうか。まあきっと大きな変化は私たちの知らない内側で色々起きているんですが、表面で目に見える所としてはこんなのがあります。
・"ディズニー作品"の定義が難しくなる
まず、”ディズニー作品”という言葉に何をどこまで含めるのかが今まで以上に難しくなる。これは作品を、ディズニーソングなんかに言い換えてもそうですね。えっ、ドレミの歌ってディズニーなんですか!?みたいな。
そしてマーベル映画でX-MENがアベンジャーズに合流できる。これまでは権利の関係から共演出来なかった二チームが出来るようになり、その試しのようなものは既に行われています。分かる人ならわかる、ワンダヴィジョンのあのキャラです。長くなるので飛ばしますね。
そしてシンプソンズとデッドプールという、メタネタやブラックジョークを連発するキャラクターがディズニーのキャラになり、きっとこれから全力でネタにしていくんでしょうね。
最後に、今までずっと事実の説明だったので全速力で個人的なおすすめ作品を紹介していきます。
「アナスタシア」 買収以前、20世紀フォックスがディズニー以上にディズニーを意識して作られたアニメ作品。ディズニー好きなら初めて観る映画なのにキャラデザとかストーリー展開のせいでなんか観たことあるような感覚になるはず。
「ナイト・ミュージアム」 そもそもの発想が面白くてしかもストーリーも楽しいずっと笑えるコメディ作品。ディズニーは是非これのアトラクションを作ってほしい。
以上です!ご清聴ありがとうございました。