トイ・ストーリー・マニア製作の物語

東京ディズニーシーで一番好きなアトラクションは?と聞かれたら、答えは人それぞれ分かれるだろうけど、今一番人気なアトラクションは?と聞かれたらもうあれしかありません。アトラクション歴史紹介第4弾の今回は「トイ・ストーリー・マニア!」です。

1995年、初のフルCG長編映画「トイ・ストーリー」で華々しいデビューを飾ったピクサー・アニメーション・スタジオ。そんなピクサー作品初のアトラクションは1998年にフロリダのマジック・キングダムでオープンした「バズ・ライトイヤー・スペースレンジャー・スピン」名前こそ若干違うものの東京のバズのアトラクションと同じシューティングタイプのアトラクションです。(ただフロリダの方が圧倒的に操作性が悪くてムズい)

このアトラクションは「トイ・ストーリー2」の冒頭、バズとその宿敵ザーグが戦うテレビゲームが元になっています。しかーし、映画の公開は1999年。なんとアトラクションより1年遅いんですね!つまりこのアトラクションは映画の製作と同時進行で進められ、ザーグの初登場というのは実は映画ではなくアトラクションだったと。

しかしこの当時、ピクサーは決してディズニー傘下ではありませんでした。ディズニーは配給だけを行う、完全に別会社。なのでこのバズのアトラクションはピクサーとのライセンス契約によるもの。ディズニーパークでは珍しい他社作品のアトラクションでした。

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しかし2006年、それも終わりを迎えます。ディズニーがピクサーを約70億ドルで買収し、子会社化します。これによってディズニーはピクサー作品をより気軽にパークに登場させられるようになったのです。その中で作る題材として上がったのが、誰もが知るピクサーの原点、「トイ・ストーリー」です。

どんなアトラクションにしようかと考えていく中で、やはりバズの大成功が頭に浮かんだことでしょう。バズは開業から10年近く経ったこの時も、そして20年経った今も常に人気で、世界6つのディズニーリゾート全てにあった数少ないアトラクションです。(香港ではクローズ済み)しかも他にコンプリートしていたのは「カルーセル」、「空飛ぶダンボ」、「スタージェット」(東京ではクローズ済み)と、昔からあるものだけ。やはりバズは他のアトラクションとは一線を画すものだったのです。

やはりバズの魅力は、ただ乗るだけでなくゲストが参加できるという事でしょう。そこで新たなアトラクションも同じくシューティングゲーム形式にする事となったのです。じゃあどんな内容にするか。このアトラクションはディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーの「パラダイス・ピア」(現・ピクサー・ピア)に作られることが決まっていたので、そのエリア設定である19世紀のビクトリア朝に流行ったカーニバルをテーマとします。正確には、カーニバルのおもちゃがテーマ。そう、おもちゃの世界は何でもありだから。アトラクションは2008年にカリフォルニアとフロリダでほぼ同時に開業し、大きな人気となりました。そして次に向かう先は東京ディズニーシーです。

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しかしここで問題発生。世界のディズニーパークの中で最もエリアの世界観にこだわっている東京ディズニーシー。当然直輸入は出来ません。

スペース的に、このアトラクションが出来るのはアメリカンウォーターフロントしかありません。しかしこのエリアの時代設定は20世紀初頭、せっかく作られたビクトリア朝という設定が使えません。そこで目をつけたのが、実際に20世紀のニューヨークにあった遊園地でした。ニューヨーク、ブルックリンの南端にコニーアイランドという島があり、そこには遊園地がありました。この時代のニューヨークに遊園地があったんだから、アメフロにも遊園地があってもいいだろ!という論理展開が凄い。こうしてディズニーシーという遊園地の中に「トイビル・トロリーパーク」という遊園地が誕生したのです。

でもそんな風に物語を作っても普通の人は何も気付かないし、めんどくさいオタクからはシーのランド化だなんだ言われてディズニー/OLCが可哀想で可哀想で...。うるさい時代は変わったんだ、素晴らしいキャラクターがいるんだからそれを使って何が悪いとしか言い様が無いよね。

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さあ、いよいよライドの中身の話へ。このアトラクションは確かにシューティングゲームだけど、普通のゲームとは明らかな違いをつける必要があった。だってワンプレイ7000円、プレイまで2時間待ちは当たり前、ファストパスという名の整理券も朝早くに売り切れるゲームが普通のゲームセンターと変わらなかったら客は怒るどころじゃ無いでしょ?でもそれは、バズで培った経験をもとに全く新しいゲームへときちんと進化しているので大丈夫。

まず最初の凄いところは、映像が全て3Dなこと。そんなに特別か?って思うけど、思い出してほしいのはこのアトラクションが出来たのは2008年、3D映画が広まりだしたのは2009年公開の「アバター」以降なので、当時としてはまだまだ珍しい技術。もちろんディズニーパークでは「ミッキーのフィルハーマジック」っていう3Dアトラクションが2003年からあるけど、自分の動きと3D映像が連動するのは楽しいじゃないですか。ね?

そしてシューティングゲームなのに撃つものが大砲なのも凄いところ。バズではよくある普通の光線銃だけれど、小さい子供にとって紐を引っ張るというのは何とも言えない喜びがあるもの。たとえ得点が上がらなくても、大砲の紐を何回でも引っ張れてその弾が目の前の3D映像に飛び出てくるって凄い楽しいじゃないですか。ね?

そして忘れちゃいけないのがライドシステム。一つのゲームが終わるごとにトラムに乗って移動をするけれど、あれって結構移動距離が長くて、決して合理的なレールの配置ではない。合理的でないってことは、意図されているということ。あれ、移動の時にめちゃくちゃ振り回されてるんですけど、気づきました?多分、回ってるなという事は分かってもどれだけ回されてるかは意識しないはず。そんな人はYouTubeで動画を見てみてください。絶対想像以上に回されてるから。このゲームからゲームへの移動は、決して大事では無い、むしろ無駄に感じるかもしれません。でも個人的にこの長めの移動こそ、似たようなタイプのゲームを5種類連続でやっているのに決して飽きたりしない秘密だと思ってます。それに移動中は隣の人と点数を見合いっこ出来るからね。

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フリーフォールのためだけに寂れたホテルを造り、ローラーコースターのためだけに巨大な山を造るディズニー。このアトラクションではシューティングゲームのためだけに、プロップスや映像を用いておもちゃのサイズになったように感じさせるスモールライトを造ったのです。つくづく凄いなぁと思う。

さて、ここまで記事を読んでくれた人のために自分が最近知った、こういったゲーム系のアトラクションで高得点を叩き出せる方法をお教えしましょう。それは...慣れです。頑張って。